病院の待合室で順番を待っていて、目のやり場に困って通り過ぎる人達の足元を見ている。どこからか右の方から、「ああ、『入院したくない』。」と、反復するように聞き返す声が聞こえる。
左の方から、ご自分の病室から歩いて来られたのであろうパジャマ姿のおばあさんが、ひと休みに、私の隣の隣の席に腰かけられた。入院されているけど、この場所はなかなか通らない、と、受付の台の上にある大きな花瓶に生けてある花を見て立派だと口に出され、「生花ですよ」と付き添いの先生が言った。私は緊張して首を横に振れない、でも聞いている、自分の名前が呼ばれた。