往路迷宮

せめて疑い尽くして得たい、か、と自分を疑う。何も得たくない、得なくていいように、失っていけばいい、失って、削いで、それをまた疑うか、 (君に来てほしい。ただ君に来てほしい。君が来るのを見たい。君だけが来るのを見たい。)

神社で落ち葉を撮っていたら余震でぎしっと揺れる。新緑の葉いっぱいの大きな木が風で揺れる音の中で、地震で古い建物が軋む音がする、のか、おうちへ帰ろう。 夕刻麦畑がやわらかく光る。前から歩いてきたおじいちゃんと一緒の女の子が「カメラだー!」と言…

ひとりぼっちのドレス 孤独の正装 どこか不穏なワルツ 倒錯する よろこび、よろめき、よわかれ(世、別れ) 真夜中の列車に乗って、どこへもたどり着かずどこまでもゆく夢をみたい。 ねむっているあいだだけ旅をしていて。

私から遠ざかって、遠ざかるけれど私の頭の中にある、白い場所に行きたくて、今日も転ぶ。 いつ、息を止めているのか。自分を信仰しているのか。

人々の世界唱 全方向反響 共鳴などしない 歌うだけ、謳うだけ、現象は、わたしだけ、あなただけのもの。わたしは、うつくしいことを解せ。解して、厭きた縷々を祭り、催せ。生の内に、死を祝え。

自分がどう話すかについてのことを考えていた。 どう会話してみたいかについて考えている。 考えるほど、語らいびとをたれびととこしらえる。

(私は頭の中から出ていけ。そして消えろ。) 幻想しか抱いていない。現実に足を着けず、ベッドの上で、地から少しでも離れ、 私は私の正論を要らない。ただ生滅する。

1月12日 夢の中の憎しみや罵倒は何なのか 1月13日 近くをヘリコプターが飛んで窓が振動する 1月18日 冷たくて重そうな風が吹いている 1月25日 浴槽のふちから水滴が湯船にすべりおちた 1月31日 なにかしなきゃ

窓は夢をみている あの声を聞いて 窓は描けない 音無し夢は通過の映し うつつの私は歌をうたう 窓はそれを留まらせる 音溶けのものはこちらですか 音問い頼んだものは 音として 遠ざかるすべて

きれいなひとに会って、きれいな時間が生成されて、そのかえりみちに、なにも落としていないこと、夢想している。 ひとりで歩くこと、ひとりで見たもの、光線、享受、息を吸う。 対話すること、夢みたいだ。

自分を繋ぎ止めるものはなんだろう。 自分を支えていかなくてはならない。

裏地がふわふわのパーカーはポケットの中もふわふわだった。自分の体温であたたかくなったおふとんのなか、ココアのこと、食べてみたいボルシチ、猫をなでたらどんな感触がするのか、自分をあたためるものの幸いが浮かんだ。

落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着けと、延々と自分に言い聞かせていく未来。

夢のような死、の渇望 もしくは死の夢の永遠

眠っている間も頭の中はずっと考えているような、目が覚めてすぐ、さっきまでみていた夢が、引っ張り出したメジャーが巻き戻っていくみたいに駆け巡った。気持ちが悪い。

木と花の形、海の色と波、 人、人、人、澄んだ空虚、 遠ざかれ。私は私から遠ざかれ。

水の眼で見たい。沈み壊れたい。応え泡せしたい。誰もいない。

ことばで会いたいし、ことばを失くしてしまいたいし、空間が、時間になって、時間は、とてもせまい。せまくて、とうめい。 突っ伏して眠って見た夢のまわりすすむせかい。夢の、中断されない、一本道で一方通行の先の唐突な終わり。目蓋の動作の残留は帰還し…

大きな公園で夕方、大きな木に後ろから差す光、隙間から漏れる光、携帯をかざして構図を取って、画面越しの逆光、やがて日が落ちて、辺りが少しずつ薄暗くなっていく夢。

幻影現象

あそぼあそぼ あたまのなかいっぱいに かってにまわってて ちらつくえいしゃきの とめられないかいそうと きもちよくなるかいへん わたしにたいする だれかのこうどう つごうよく むけられるこうい わたしはかれらを ゆめのなかにおいていく またはかれらも…

家の外も家の中も夢の中もこわいので起きている。 町と空の境が赤らんでくる秋冬の朝。 ここにいることなんてないんだ。

遮るものがなにもなく広く、広い空間で、出した声が、何倍にもなって、自分へ返って押し寄せてくるような響き。箱詰めの内側に、いるという感知。 こわい物事が、増えていく。いつか息をすることも、恐怖になり、息を止めて、それをやめることができるのなら…

予報通りの深夜の雨を聞く 毛布とココアと狂気があればそれで

一時間が 過ぎてしまった ここで 今日もできなかったこと 雲の見当たらない空が 時間の経過を知らせるわずかな色の変化 飛ぶ鳥(落としていかないで) 答えよ 指で唇をおさえ この先を口にしない この先をもう少しも この先を進まない

多分灰色の雲の翼。だから空にいるもの。どんな生き物かは光で現されていない。

夢日記:ケンカをしながら説得もするのは

これは納得をしていない一部の人間への脅しの物語で(そこが道端であろうと考えを改めろ)、学校は安全、争ってはいけないと決まっているから(中立地)、教室、やる気のない生徒(好都合)、ブラウン管ワイドテレビを点けた隣の席の人、パンやケーキやチロ…

だるさのなかに浮いた不定形を変化させる。まぶたで触れてみようか、足先でつついてみようか、転がしてみようか。私の移動のかわりに窓が死ぬ。物は増えず、有るものがごみになる。臨みを近付けて。