カーテン越しの太陽光、偏頭痛の始まりに、布の皺の影の波を、平らにして頭を乗せる。 人へ触れられずの手は夢想のなかどこへと伸びる?大事なには触れず、好きなには触れたい。否、触れて好きになりたい。 穏便の表情を剥がして狂気に笑いたい。なにかをす…

台風が通り過ぎた後、灰色の空、アパートの前にできた大きな水たまりの中で一人無表情で遊んでいる女の子、頭上に三角の凧を飛ばしながら走り回って笑う男の子、神社の敷地内に散乱している大木の折れ枝。スーパーのパン売り場にはパンがほとんど残っていな…

見えないものを書いて暮らしでなくなって物の固さがなくなって音がなくなってこれからがなくなって(しまえ)憑依していた。 時計の振り子と秒針のずれ、少しずつ生じる時刻のずれ、手に何か握っていないとだめ、見えないもの、いないはずの見えないものの気…

イヤホンをした耳の外から、雨粒が窓ガラスを叩く音、少しずつ大きくなり、窓を洗っているようで、カーテンの向こうで、ガラスを流れているところの透明さ、に切り替わる、外国のホラーゲームの動画の鮮血、どうしようにないこと、慣れて、馴染んで、詰んで…

睡眠を遂げ、長い夢は溶け、最後のほうで、小窓から脱出して土手へ出たし、追っ手の存在は無くなって、二人がどぶへ飛び込んだのはわざとで、ああ、やっぱり思い出したくないや。(「母方の実家だよ。」と、誰かに言った自分の声) 雨が降る。雷が鳴る。じん…

こわい こわい レースカーテンの向こうの景色がこわい 家のどこかの窓が開いているのがこわい 外の音がこわい 外のにおいがこわい 時間の経過がこわい こわくないこわくない こわい 自分が消えるまでこわい

雨がしとしと降っていて、うっすらとセミの鳴き声がして、葉に柵に物干し竿に、水滴が付いていて、なんだか発狂しそうだ。

父のうめき声が、イヤホンをしただけの耳にも聞こえてくるくらいの未明。以前に言っていた、悪夢を見ている時だろうか。それ以上は訊くことができない。

単一の綻び 体の要らなさ 続く亀裂 地上をまっぷたつにするためにどこまでも走る 途中で隙間の奈落に君を落として 君はそこへ入り込んだ海と交じる 私はそれを歓喜する 壊れてくあいだ 星のにおいがすればいいのに

梅雨のくもりの朝、まだ誰も起きていない家の中で、同じくらいの小さめの音量の、鳥とかえるの鳴き声を聞きながら少しぼーっとしたあと、マーラーの交響曲第5番アダージェット、リピートしながら、醒めてしまう前に融かそう。

向こうに海が見える道を、海を目指して歩いていたら、道を違えて山が見えてきて、どうして見えているのに間違う?夢。 日中、けたたましいくらいの小鳥たちの鳴き声と、車がたまに通り過ぎる音、工場の機械や農業用車の音を自室の床に座って耳にしながら、窓…

夕方窓を開けたら、室温計の表示が数度下がっていった。風で膨らむレースカーテンにそっとさわる。 薄暗くなりながら、鳥の声が小さくなっていきやがて聞こえなくなって、何をするでもない、自分を、この場所からずっと、ずっと殺したい。

布団を薄手のものに変えたら、穏やかで涼しい海辺を歩く夢をみた。

庭で芍薬にカメラを向けていたら、お隣のおばさんがお庭の花を摘んでらっしゃって、思い切っておはようございますと声をかけたら、それから話を広げてくださってうれしかった。緑もその中の芍薬も鮮やかすぎて、レンズ越しにも目が眩んだ。

4月10日 風の強さ、くもりで薄暗い朝の部屋、花屋さんで青いバラを見た。 4月14日 天気雨のなか、うぐいすの鳴き声が一度、はっきりと美しく響いた。そして再び雨音と脈拍に意識が戻る。 4月23日 両耳に人差し指を突っ込んで聞こえる地響きのようなもの 亡命

もう一度自分に、強さが欲しいかと問いかけた、そうは思わなかった。 夢の中で裸足で外を歩いているのがすごく気持ちいい。土の上、砂利の上、コンクリートの上。 ゆっくりゆっくり朽ちていきたい。

病院の待合室で、男の子が遊んでいたおもちゃのケーキがプラスチックの音をたてて足元へ転がってきて、あわわと拾って、近付いてこられたお母さんの腕だけを視界に入れながら手渡した。(「すみません」「いえいえ」)淡いグリーンのソファーももう寒々しく…

部屋に入ってきたとかげを掃除機で追いかけばらばらに吸い込む場面、パソコンに外国語の広告ウィンドウが出続ける場面、途切れては破裂する夢を脱ぎ捨てて起き上がる。

あちらにもこちらにも腕の中にも猫がいる夢、みずいろの毛の子をみつけて抱き上げ、いつも一緒に眠った。